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地域の資源を掘り起こして活かし、元気な地域づくりを目指します

 ふるさと絵屏風づくり・エッセイ


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ふるさと絵図で蘇る山内
語る絵、語れる人が地域の宝(資源)〜里山の記憶を伝える〜

 
  甲賀市土山町山内地域は、三重県と滋賀県の県境にあり、東海道、国道1号線、第二名神が通る交通の要所にあり ます。名の通り周囲は山で囲まれていて、地域の中央には、琵琶湖に注ぐ野洲川の源流の一つ田村川が流れています。また、美肌効果がある温泉が湧き出ており、「やっぽんぽんの湯」として親しまれています。
 山内地域には6つの区がありますが、平成 28 年度末で小学校は閉校となり、中には高齢化率 50%を超える区もある状況です。
 「何ーんにもないところ」と言う地域の声に対して、地元の良いところ(宝)探しを小学生の子どもたちと始めたのが、山内エコクラブのスタートです。


 
それは笑顔から始まった

 山内エコクラブは、地域の豊かな自然や文化を伝承してきた高齢者に着目し、百歳を目指してそこに住む人たちが元気でいられる環境づくりを目指しています。
 平成 21 年、地域にまつわる昔の話(雨どい祭り、井戸、川、生水)等の「水と暮らしの文化」について、小学生による聞き取りが始まりました。子どもたちの質問に、丁寧にユーモラスに答えてくださる高齢者。その自信に満ちたいきいきとした表情こそ、地域のエネルギーではないかと、地域づくりのヒントを得たのです。平成 23 年からは、山内自治振興会の取り組みとしての名人発掘事業、その名人を活用した事業の展開を再びエコクラブが担いました。
 エコクラブでは、人々の元気(健康)は、身体だけでなく、心(精神)、そして社会的な側面から作り出そうと、特に地域社会で自分が“認められ、自信と誇りを持って暮らせる”居場所と役割づくり、地域住民の力の可視化のサポートが活動のコンセプトです。
 高齢者聞き取りから、昭和初期には、農業が主流で農作業の手伝い合い(かたみ分け)や萱講、牛の貸し合い、野洲川での川遊びや魚つかみ、井戸からの水のくみ上げや現在も続く雨乞い祭り等、隣人を大切にしながら水や川、自然に親しみ感謝する文化がこの地に息づいていました。こうした地域の暮らし文化を次代に伝えたい、古老の記憶を可視化して絵屏風にしたい、地域外の人に山内の良さを知ってもらうツールにしたい、古老が語り部として活躍していただきたいなどみんなの思いが一つになっていきました。

ふるさと絵屏風をつくろう
 古老の脳裏に刻まれている日本の里山の原風景を残すツールとして巡り合ったのが、滋賀県立大学上田洋平氏が提唱するふるさと絵屏風でした。
 山内は小さな6つの集落ですが、それぞれの文化、歴史はそれぞれある、だったら6つの地区ごとに絵屏風を作ろうとしました。県下では一度に複数の絵屏風制作をされた場所はありません。
 「ふるさと絵屏風」制作は、地元高齢者への五感アンケートにより 50〜60 年前の暮らしの様子を聞くところから始まります。山内のふるさと絵屏風は、昭和 30 年以前の農耕に機械が入らず、隣近所や自然との共生を大切にしていた里山の暮らしを描ことしました。
 さらに多くの人から何回も話を聞いて、昔の地元の様子をイメージしていきます。この過程では、様々な大学生が協力してくれました。
2 年にわけて 6 地区の絵屏風を作るという壮大な計画は、気の遠くなる取り組みでした。他地区の取り組みを聞くと、美大生や専門の絵師が中心に作成されています。しかし、わが山内は、立地的にも大学生が通うには遠く、専門の絵師もいないことが大きな壁でした。頼みの綱は、地元の方々。地元の方々にすれば、「昔のことをしゃべるだけ」と聞いていたのに、「絵は苦手、そりゃ無理」と。

お年寄りの心にスイッチが入った
 そんな中でも、見かねた地元の方 70 代後半の3,4人で聞き取りした場面をパーツにする作業が始まりました。四季をどう表現するか、どこを自分たちのメインのストーリーにするか等、明治の古地図見比べて、時には作業が止まり昔話が盛り上がる和やかな楽しい作業が続きました。さらに、若者の有志や高校生の参加で機運が一気に高まりました。
 2 ヶ月後、ついに見事な大きな絵屏風が 3 地区できあがったのです。
2 年目は、自治振興会の協力を得て、大勢の地元の方々が参加され、役割分担しながら残り 3 地区の絵屏風作業が進みました。後から聞いたことですが、公民館の 2 階を貸し切って 3 地区同時に作業を進めたことで、地域の方が筆を持ちながら時にはアドバイスをし、ライバル意識を持って燃やしたというのも後から聞いた話です。皆さんの団結力には圧倒されました。
 6 地区すべてが出来上がった際には、地元のホテルの大ホールでふるさと絵屏風大集合と題して、6 つの山内絵屏風と県内の4 地区の絵屏風でわいわい「語り合い」「たずね合う」というセッションをしました。山内のふるさと絵屏風は、飾っておくものではなく「語り合う」ものであることを確認しました。

新たな共生社会をめざして
 人口減少と少子高齢化で中山間地域の過疎化が止まりません。一方で、豊かな自然の中で暮らしたいという田園回帰の傾向にある中で、新たなコミュニティづくりが求められています。私たちは、ふるさと絵屏風づくりを通して、失われていく里山の記憶にこそ新しい時代を拓くヒントがあると思うようになりました。古老は語ります。「ひとり一人が、人任せにしないこと、みんなで創り上げる楽しさを持つこと、それぞれに役割があり生きがいを持つこと、おたがいさまの気持ちを持つこと等が、この地で生き抜く共生社会の姿かなあ。」
 山内エコクラブの挑戦は続きます。今年は完成したふるさと絵屏風を活かして、地域の誇りを取り戻し、人・地域・自然の「健康」について考え、SDGs「誰ひとり取り残さない地域社会づくり」を具体化していこうと心新たにしています。
                    (2018.4記)


 


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